酢の種類

 世界にはなんと4000種類もの酢があると言われています。「酒のあるところ、かならず酢あり」という言葉もありますが、どんな酒でも発酵させれば酢となります。つまり、酒の種類だけ酢の種類がありえるわけで、こんなに膨大な数になるのです。海外には、はちみつやココナッツ、バナナから造った酢なんてものまであります。

 日本でもっともポピュラーな酢は、言うまでもなく日本酒から造る米酢です。では、外国ではどんな酢が一般的に使われているのでしょうか?
 その国で愛飲されている酒から連想すれば、たいてい正解です。
 たとえば、フランスと言えばワイン。当然、ワインビネガーが一般的です。また、ビール好きで知られるイギリス、アイルランド、ドイツならビールから造るモルトビネガーといった具合です。もちろん、この連想からだと正解が難しい国もあります。そのいい例がアメリカです。「ビール?、それともバーボン?」と普通は考えるでしょうが、正解はりんご酒から造るりんご酢。ただ、今でこそりんご酒はアメリカの国民酒の座を降りていますが、「第2代大統領ジョン・アダムズは毎朝かならずジョッキ1杯のりんご酒を飲んでいた」なんて逸話が残るくらい、かつては愛飲されていました。

 このように、酢はその国の酒文化と密接な関係にあります。酒と食文化が切り離せない関係にあることを考えれば、酢はその国の食文化を象徴する調味料と言うこともできるでしょう。

代表的な酢の特徴

ワインビネガー
フランスやイタリア、スペイン、ポルトガル、ドイツなど、ワインの産地で造られるヨーロッパを代表する酢。ちなみに、英語で酢を意味する「vinegar」は、フランス語の「vin(ワイン)」と「aigre(すっぱい)」が合体してできた言葉です。
ワインと同様、赤と白の2種類があり、赤ならコクのあるどっしりとした味。白なら軽くあっさりとした味が楽しめます。洋風の料理によく合い、ドレッシングやマリネなどに使われるほか、煮込み料理の隠し味として、またソースにも用いられます。

バルサミコ酢
北イタリアのモデナ地方に伝わる伝統的な酢。ワインと甘みの強い白ブドウ果汁を煮詰め、長期に渡って木の樽で熟成させたものです。上部が開いた木樽の中で蒸発して濃くなった酢は、より小さな樽へと移し替えられます。樽の木の種類を変えることにより、複雑な香りと味になります。ウィスキーなどと同じように、熟成期間の長いものほど珍重され、なかには80年以上熟成したバルサミコ酢もあるそうです。一般的には、「バルサミコ」とは、「芳香性の」という意味。香りが高く、まろやかな甘みがあります。ソースに使ったり、ドレッシングやマリネに入れると味を引き立ててくれます。

りんご酢
りんごの生産がさかんなアメリカでポピュラーな酢です。りんごの果汁を発酵させて造られます。さっぱりとした爽やかな味わいとりんごの甘い香りが特徴です。野菜と相性が良いので、サラダに良く使われる他、蜂蜜などでうすめてドリンクとしても楽しむことができます。

モルトビネガー(麦芽酢)
ビールの醸造がさかんなイギリスを代表する酢です。大麦、小麦、トウモロコシを原料に、大麦の麦芽を使って造られます。ビールに似た独特の味と香りがあり、ピクルスやマヨネーズに適しています。イギリスやアイルランドの人々は「フィッシュ アンド チップス」にたっぷりとかけて食べることを好みます。

シェリービネガー
白ワインにブランデーを添加して造る酒精強化ワイン、スペイン・ヘレス地方特産のシェリー酒から造った酢。オーク樽で長期熟成させて造られます。シェリー酒特有の豊かな芳香が楽しめます。主に、ドレッシングやソースに用いられます。

穀物酢
米酢以外の穀物酢。1種類または2種類以上の穀物を原料とした酢のこと。米、酒粕、麦、トウモロコシ、豆、サトウキビなどが原料です。米が40g以上入ると米酢となるため、それ以外の原料の割合が多くなります。原料から酒を造る代わりに醸造用アルコールを添加することが多く、安価で手に入ります。シャープな酸味が特徴です。

本格的な果実酢

 私ども飯尾醸造でも、米から造った米酢や玄米黒酢だけでなく、様々な種類のめずらしい果実酢を造っています。例えば「紅芋酢」、「無花果(いちじく)酢」、「黒豆酢」、「にごり林檎酢」などです。その製法は果実を酢に漬け込むのではなく、果実からいったん果実のもろみ(酒)を醸し、それを発酵させて果実のお酢を造るというもの。「無花果酢」は煮詰めてバルサミコ酢のように使うと繊細な風味のソースになりますし、「紅芋酢」はかぶらや大根の酢漬けを鮮やかな紅色に仕上げてくれます。それぞれの果実のフルーティーな風味が、お料理に新鮮で面白い表情を加えてくれます。特徴によって使い分けると、酢の世界がぐんと広がることでしょう。

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